天気予報
将来の天気あるいは天気と関係する大気の状態を予報すること。
天気予報の始まりは観天望気や天気俚諺 (てんきりげん) であるが,科学的な方向に歩みだしたのは温度計,気圧計などの測器がつくられ,定量的な観測が可能になってからである。
1820年ドイツ人ハインリヒ・ウィルヘルム・ブランデスは1枚の天気図をつくって,雨や曇りの区域が低気圧になっていることを見出した。
国家の手で組織的に日々の天気図をつくって,天気予報に利用したのはフランスである。
クリミヤ戦争のときフランスの誇る世界最初の鋼鉄製の軍艦が暴風雨のため沈没したことがきっかけとなって 1855年に始められた。
その後,天気図に等圧線を描くだけでは天気予報に対して不十分なので,天気図の解析法が研究された。
1920年頃,ウィルヘルム・ビエルクネスを中心とするノルウェーの気象学者たちは,気団,前線という新しい概念を基礎にして,低気圧の構造とその一生についてのモデルをつくり上げ,近代気象学の基礎をつくった。
その後 1920年にラジオゾンデが開発されて中緯度の高層観測が充実し,第2次世界大戦後広域の高層 (主として 500hPa面) 天気図が解析されるようになって,新たにロスビー波,ジェット気流,ブロッキング高気圧が発見され,天気とも密接な関係があることがわかり,天気図の総観解析も地上だけではなく高層を含む三次元に拡張された。
同じく 1920年代に,イギリスのルイス・リチャードソンは実際の大気に流体力学の方程式を適用し,それを数値的に解くことによって天気予報が可能になると考え,みずから計算を実行した。
しかし,計算に時間がかかりすぎることなどによって,この方面の発展は戦後のコンピュータの登場まで待たねばならなかった。
戦後アメリカのジュール・グレゴリー・チャーニー,ノーマン・A.フィリップス,ジョン・フォン・ノイマンなどにより,コンピュータを用いて簡単化された流体力学の方程式の数値積分が実行され,数値予報の先駆となり,その後の隆盛に連なった。
近年レーダ,気象衛星,飛行機観測などによって観測は一段と充実しており,天気予報の精度も格段の進歩を遂げているが,天気予報の難しさは依然として解消されていない。
天気予報をその予報期間によって分類すると,2〜3日先を予報する短期予報,1週間,10日先を予報する中期予報 (週間予報あるいは旬日予報) ,1ヵ月,3ヵ月,6ヵ月先の暖候期,寒候期を予報する長期予報,ほかに数時間から半日を予報するメソ予報,1〜3時間を予報する単時間予報に分けられる。
また用途によって分類すると,一般予報と特殊予報とに分けられる。
一般予報には前述の短期予報,中期予報,長期予報に加えて,注意報,警報,情報とがある。
特殊予報には海上予報,航空予報,鉄道予報のように事業を対象にしたものと,洪水予報,雷雨予報,降霜予報,火災予報,異常乾燥予報のように現象を対象にしたものとがある。